1. 十数年目の「予期せぬ中断」
私は毎朝のルーティンとして、10年以上フリーウェイトを用いたトレーニングを続けています。日々の積み重ねは自信となり、負荷を上げていくことは、ビジネスにおける成長と同じく大きな喜びでもあります。
しかし先日、トレーニング中に大胸筋の腱を痛めてしまいました。筋肉そのものではなく、筋肉と骨を繋ぐ「腱」の損傷。筋肉は負荷に耐えられても、それを支える結合部が限界を超えてしまったのです。
結果として、約2週間、一切のトレーニングを中断せざるを得なくなりました。 毎日欠かさず行ってきたことが止まる。そのもどかしさの中で私は、この経験が経営における「ある重要な教訓」を指し示していることに気づきました。
2. 「成長」と「膨張」を履き違えない
格言に「物事、極まれば必ず反る(ものごと、きわまればかならずかえる)」という言葉があります。勢いが極限まで達すると、必ず反対の方向に動き出すという意味です。
経営もトレーニングも、成長を求めるあまり「負荷」を上げ続ける局面があります。しかし、売上や規模という「筋肉」ばかりを急激に肥大化させると、それを支える組織の仕組みや理念、スタッフの心という「腱」が、その負荷に耐えきれず悲鳴を上げてしまいます。
今回の私のケガは、まさに「もっと強く、もっと高く」という意識が、支える側の強度を追い越してしまった結果でした。 「無理」と「無茶」は違います。 限界に挑むことは尊いですが、基盤を壊してしまっては元も子もありません。持続可能な成長のためには、今の組織(身体)がどの程度の負荷に耐えられるのか、その「節度」を見極める冷静さが不可欠なのです。
3. 「急がば回れ」——休止という名の戦略的準備
ケガをした直後の2週間、私はただ静養していたわけではありません。 先日お話しした「緑茶を細かくして丸ごと飲む」習慣をさらに徹底し、内側からの回復に努めました。また、先日の避難訓練で再確認したように、「有事の際にどうリカバリーするか」という視点で、自分のコンディションを客観的に見つめ直す時間としました。
格言に「急がば回れ」、あるいは「弓は引き絞るほどに遠くへ飛ぶ」とあります。 一見、トレーニングを休んでいる時間は後退に見えるかもしれません。しかし、傷ついた腱を修復し、以前よりも強固な組織として再生させるためには、この「静」の時間が絶対に必要でした。
経営においても、時にはアクセルを緩め、内部のコンディショニングに充てるべき時期があります。それは停滞ではなく、次の大きな跳躍のために、より強固な「腱(組織基盤)」を作り上げるための、戦略的な準備期間なのです。
4. 2週間を経て、再びバーベルを握るために
ようやく、トレーニング再開の目処が立ちました。 この2週間で学んだのは、「自分の弱さを知る勇気」です。 どんなに鍛えていても、壊れるときは一瞬であること。そして、壊れたときにこそ、日頃の「備え(防災や健康管理)」の真価が問われるということ。
再開にあたっては、以前と同じ負荷から始めるのではなく、まずはフォームを確認し、腱の調子を伺いながら、丁寧に進めていくつもりです。 これは、新しいプロジェクトを立ち上げる際の慎重さにも通じます。 「千里の道も一歩より始まる」。 焦らず、しかし着実に。一度痛みを経験したからこそ、以前よりも深く、自分の身体と対話できるようになりました。
5. 終わりに:強さとは、しなやかさである
本当の強さとは、単に重いものを持ち上げることではありません。 負荷に耐えうる「強靭さ」と、変化を受け流す「しなやかさ」、そして万が一の際に立ち直れる「復元力(レジリエンス)」を兼ね備えていることです。
避難訓練、健康的な緑茶の習慣、そして今回のケガと復帰。 これら全ては、私の中で「持続可能な誠実さ」という一つの答えに結びつきました。 お客様の安心を一生涯守り続けるためには、私自身が、そして我が社が、健康で、健全で、かつ無理のない強さを持ち続けなければなりません。
「筋肉(成果)」を誇るのではなく、「腱(基盤)」を大切にする経営。 皆様の大切な暮らしを支えるパートナーとして、私自身もこの経験を糧に、より一層気を引き締めて(そして体も労わりながら)、日々の業務に邁進してまいります。
トレーニング再開の初日は、いつもより少しだけ時間をかけて、丁寧に緑茶を煎じ、静かな覚悟を持って挑みたいと思います。